信託

【M&Aのよくある質問】事業承継の円滑化するために、信託が利用できるというのは、どういうことですか?

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事業承継に際して、先代経営者や後継者の希望に沿った財産の移転を行うために、信託の活用を行うもので、平成18年の信託法改正により、幅広く利用されるようになっています。信託は、もとより「大切な財産を、信頼できる人・会社に託し、自分が決めた目的に沿って大切な人や自分のために運用・管理してもらう」制度で、信託契約の定め方によって自由な設計が可能であるところにその特徴があります。

具体的に、事業承継に際して活用される信託の典型として、「遺言代用信託」があります。これは、先代経営者が死亡した場合の株式の承継について定めるもので、遺言の作成に代わる手法として注目されています。以下は、遺言代用信託のイメージ図です。

「遺言代用信託」は、経営者がその生前に、自社株式を対象に信託を設定し、信託契約において、自らを当初の受益者として、経営者死亡時に後継者が議決権行使の指図権と受益権を取得する旨を定めるものです。これにより、

① 経営者Aが生前に後継者たる子Cによる受益権の取得を定めることにより、後継者が確実に経営権を取得できる、

② 受託者Bによる株主の管理を通じて、先代経営者が第三者に株式を処分してしまうリスクを防止することが できる、

③ 先代経営者の死亡と同時に後継者が受益者となることから、遺産分割等による経営の空白期間が生じない、

といったメリットを享受できます。尚、ここでの信託は、その財産を託す相手(受託者)の属性により、民事信託(家族信託)と商事信託の二つに大別できます。民事信託の場合は、受託者について基本的に制限はありませんが、商事信託においては、信託業法による厳格な規制を受ける信託会社が受託者となります。

一方、その他の信託として、「他益信託」と「後継ぎ遺贈型受益者連続信託」があります。 他益信託は、経営者が信託契約において後継者を受益者と定めつつ、議決 権行使の指図権については経営者が保持する旨を定めるものです。経営者は、議決権行使の指図権を引き続き保持することにより経営の実権を握りつつ、後継者の地位を確立させることができ、また議決権行使の指図権の移転事由などについて、経営者の意向に応じた柔軟なスキーム構築が可能できます。

「後継ぎ遺贈型受益者連続信託」は、経営者が自社株式を対象に信託を設定し、信託契約において、後継者を受益者と定めつつ、当該受益者たる後継者が死亡した場合には、その受益権が消滅し、次の後継者が新たに受益権を取得する旨を定めるものです。これにより、先代経営者は後継者の次の後継者を定めておくことができ、柔 軟な事業承継を実現することができます。

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