三越伊勢丹ホールディングス(HD)が2月10日、上場会社のニッコウトラベルに公開買付することを発表しました。三越伊勢丹HDは、三越伊勢丹グループの会社を保有する持つ持株会社ですが、最近M&Aによる投資を活発化させており注目です。
三越伊勢丹HDは、昨年11月に高級中古ブランド品のECサイトを運営するアクティブソナー社に出資、また、今年に入りエステ・美容大手のソシエ・ワールドの全株式を、投資ファンド、ポラリス・キャピタル・グループから取得を発表しています。
アクティブソナーは、高級ブランド品の委託販売・買取サイト「RECLO」を運営するベンチャー企業で、特に首都圏富裕層向けの出張買取サービスを強化している。今回の資本注入により、ブランド品二次流通業界で大きく先行するデファクトスタンダード社やマーケットエンターテイメント社の追随を図りたいところ。
ソシエ・ワールドは全国でヘアサロンやエステティックサロンを展開する美容業界の老舗大手で、フランス高級ブランドゲランとコラボした富裕層向けサロン「ゲラン パリ」の運営を行ってきました。しかし、海外などの積極的な拡大が重荷となり経営が悪化、日興プリンシパル、シティグループとエクイティファンドによるテコ入れ経て、2013年にポラリスがソシエ・ワールドの発行済み株式のほぼ100%を約30億円で取得していた。
今回のニッコウトラベルも、60歳以上の富裕層を主要顧客としており、本業である百貨店事業、とりわけグループが提供する「エムアイカード」事業と大きなシナジー効果を見込んでのディールと推測されます。
さて、今回の三越伊勢丹HDによるニッコウトラベルの取得の発表は、約43%を有する筆頭及び2位の株主と水面下での交渉を終えて、公開買付の手続きに入ったもの。合意価格(=買付価格)は1株390円で、ここ数ヶ月の平均からすると、約30%のプレミアムとなり、筆頭及び2位の株主以外すべての株主全員が買付に応じた場合、買収価格は38億円となります。平成28年3月末に株主資本額が約38億円となっていますので、その意味では妥当なプレミアムといえるかもしれません。
尚、一部の報道では、三越勢丹HDが公開買付を通してニッコウトラベル社を完全子会社化、非上場化するといった断定的な書かれ方をされているようですが、そこは若干勇み足といったところ。あくまで、これから公開買付の手続きに入るわけで、これを上回るカウンターオファーを出す会社が現れる可能性もゼロではないからです。あくまで、理論的にはですが。
尚、一般的な公開買付によるM&A戦略のプロセス概要を以下にご紹介します。
ターゲット会社の特定
プロジェクトチームの発足(社内選抜・外部ファイナンシャルアドバイザー)
ターゲット会社の詳細情報収集、株価モニタリング
買収目的・買収後の事業戦略の作成
ターゲット会社の大株主とコンタクト
大株主の売却意思確認と価格交渉
為替ヘッジ(クロスボーダー取引の場合)
大株主との基本合意契約締結
ターゲット会社経営陣とのコンタクト
株式公開買付の手続き
クロージング・資金決済
新経営体制の構築
(案件によりプロセスが前後します)