中小企業においては、会社の借入れについて現経営者が個人の連帯保証を提供している、また自己所有の不動産等を担保に提供しているケースが一般的で、これらを解除しなければ、事業承継後も現経営者がそれらの負担を追い続けることとなり、身内に事業継承した場合、相続が発生すれば債務を相続人間でどのように負担するのかといった困難な問題が生ずることとなります。従って、このような将来の相続時のリスクを回避するためにも、事業承継時に現経営者から後継者へ、事業用資金の借入債務や担保に供している事業用資産も併せて承継しておく必要があります。
ただ、従前金融機関は、経営への規律付けや信用補完の観点から、経営者に連帯保証を求めてきた経緯があり、その際には、当然経営者の経営能力に対する評価が前提とされてきました。一方で、身内での事業承継においては、一般に経験やノウハウの少ない後継者が事業を承継することになるため、結局、金融機関は事業承継時の保証の承継・解除に対しては消極的な姿勢を示してきた実態があります。このような実態が大きな課題のひとつとなり、事業承継が進まない要因の一つとなっていることも事実です。
このような中、経営者保証の課題・弊害を解消するため、日本商工会議所と一般社団法人全国銀行協会を事務局とする「経営者保証に関するガイドライン研究会」により、平成25年12月に「経営者保証ガイドライン」が策定されて、中小企業経営者の個人保証の問題に関し、新しい考え方をしめすことに至っています。
これによると、事業承継を進める中小企業の経営者が、金融機関に経営者保証の承継・解除を進める前提として、会社側に以下のような具体的な対応を求めています。
まず、
① 会社が経営者に依存しない融資を受け入れるために、法人と経営者との関係の明確な区分・分離、
② 財務基盤の強化、
③ 財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性の確保、
を進めることです。
次に、事業承継時の対応として、④現経営者及び後継者は、金融機関からの情報開示の要請に対して適時適切に対応すること。特に、経営者の交代により経営方針や事業計画等に変更が生じる場合には、誠実かつ丁寧に説明を行うことです。
この経営者保証ガイドラインは、金融機関にも経営者保証を求めない可能性の検討を求めていますが、まずは経営者側がガイドラインに沿った対応を行い、金融機関へ積極的に継承・解除申し出を行い、話し合いを進めることが重要となります。