M&Aの実行フローとして、ここでは、以下のような簡単なフローを紹介します。
ファイナンシャルアドバイザーへの初期相談
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ファイナンシャルアドバイザリーとの機密保持契約
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財務データの開示と初期分析
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譲渡条件(価格)と譲渡スキームのすり合わせ
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譲渡先企業のリストアップと交渉
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譲渡先企業との基本合意契約
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買収監査(デューデリジェンス)への準備と対応
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最終譲渡条件・スキームの調整
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最終譲渡契約の締結
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クロージング(決済)
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ポストM&A
上記の手続きは、基本的な流れですが、案件/プロジェクトによっては一部省力する手続きや、手続きの順番が前後する場合があります。この一連の手続きですが、初期相談からクロージングまで通常半年程度、ケースによっては一年かかることもあります。
尚、ポストM&Aは、M&Aの手続きが完了した後、事業の継続性を維持し、かつ会社統合の効果(シナジー効果)を最大化するための手続きです。具体的には、譲渡される企業の従業員や知的資産等を円滑に承継し、顧客・消費者にも無用な不安感を生じさせることなく、これまで通りの売上を維持させるため最大限の措置を取る手続きです。この場合、売り手・買い手両社の合意のもとに、売り手企業の前経営者がM&A実施後に、一定期間、例えば「顧問」として会社に残ることも有効な手段となります。その間、前経営者が、新しく代表者となる経営者に支援と助言を提供することが重要です。ただし、その期間が長く、前経営者の影響力が大き過ぎることは逆効果となりますので、注意が必要です。
尚、上記のM&Aのプロセスにおいては、いくつかの契約を締結することになっています。最終段階の「譲渡契約」は、当然行われる契約で、これで株式の譲渡、あるいは事業の譲渡が完結します。
一方、M&Aを検討・相談する段階で、ファイナンシャルアドバイザーと「機密保持契約」を締結しますが、これは大変重要です。この機密保持契約は、ファイナンシャルアドバイザーが機密保持「誓約書」として差入れる形もあります。ファイナンシャルアドバイザーの中には、この手続きを踏まないアドバイザー/会社がしばしばみられるようですが、要注意です。
M&Aにおいて、特に会社を譲渡する立場では、機密保持の徹底は最も重視すべき点であることは繰り返し述べてきましたが、これを疎かにするファイナンシャルアドバイザー/会社は、信頼できないと判断したほうがよいでしょう。そして、M&Aの中間点となる「基本合意契約」も大変重要になります。
これは、買手候補が概ね確定したところで、一定の条件のもとで、売手・買手双方が、会社の譲渡・承継の意思を確認するものです。横文字では、LOI(Letter of Intent)とも呼ばれているものです。この基本合意書で確認される事項は、譲渡条件(金額)、譲渡スキーム、スケジュール、買収監査(デューデリジェンス)を実施するにあたっての独占交渉権、機密保持などです。
この基本的な事項を相互に約したあと、本格的な買収監査(デューデリジェンス)を実施することになります。 基本合意契約締結の後、買手側より買収監査(デューデリジェンス)が実施され、基本合意に基づいた譲渡条件およびスキームについて、最終的な調整が行われ、最終契約を締結することになります。
譲渡条件及びスキームに関する最終調整に関して、基本合意で確認された価格条件が変更されることもありますが、それは、通常は、デューデリジェンスの結果、会計データの不適切な処理、重大な簿外債務が発見されるなど、基本合意の条件に重大な影響を及ぼすと合理的に判断される事項が確認された場合に限ります。