近年、多くの会社オーナーが抱えている悩みですね。
ご子息が会社の経営に興味を持てないのは、様々な理由があるとは思いますが、その一つといえば、例えば研究職に就きたい、クリエイティブな仕事がしたい、全く違う業界で活躍したいなど、はっきりとしたやりたいことがあるからでしょう。
しかし、よくよく聞いてみると、一般の会社に就業されているケースも意外と多く、しかも同業に勤めているにも関わらず、家業に戻る意思はないという。それは結局、家業の古い事業モデルが市場の変化に取り残されてしまった、また金融債務が相当程度あり連帯債務を継承したくないといった、ご自身の興味というよりも、家業そのものの将来に不安を抱いているために、親の会社を継ぐ気になれないというものでしょう。
そのような場合、もし事業を継承してもらうまでにまだ時間があるのであれば、その間に、会社の強みに磨きをかけ、新規開拓の営業に力を入れ、新しい業態にもチャレンジして事業の幅を広げ会社の魅力を高める、また利益が出れば少しでも金融債務の返済に充てる、などの努力が望まれます。
オーナーが引退の時期を設定し、そこまでの具体的な成長戦略に基づいた事業計画を作成し、会社の未来を具体的に示してあげることも必要かと思います。世の中には、いわゆる古くなってしまったビジネスモデルを、創業家のご子息が最先端の事業に塗り替えて成功させた事例がたくさんあります。
当社が応援したケースでも、例えば地味な業務用酒販店を経営していた会社を継いだ2代目社長が、利幅が薄く常に貸し倒れのリスクを伴うビジネスモデルを捨て、高級食品スーパーチェーン事業に方向転換して成功したケース。
また、昔ながらの質屋事業を、高級ブランド品のリユース事業に転換し成功したケースなどがあります。
いずれのケースも、創業者が築き上げたものに、新しい世代の発想を加え、新しいチャレンジを創業者とともに行い、成功したケースであり、手本になるものと確信しています。
一方、同時に必要なのは、ご子息が会社経営を担う素質、能力はもちろん、気力、人間力が本当にあるのか否か、見極めることです。会社を創業しあるいは引き継いで経営を切り盛りされてきた会社オーナーにおいては、会社の経営がいかに難しく厳しいものであるか、十分に理解されていると思います。
もしご子息がどうしても経営に興味を持てない、あるいは資質が疑問、あるいは経験があまりにもないと言った場合、安易に会社を継承させるべきではありません。
経営に失敗すれば、従業員は失業し、担保に供している一族の資産を失うことになるからです。そのような場合は、思い切って第三者あるいは他の会社に会社を譲渡することも選択肢として検討すべきでしょう。 また、もしご子息がまだ若い、あるいは素質は見込まれるものの経験がないと言った場合、例えば、株式の相当分を一旦投資ファンドに譲渡し、一定期間オーナーとともに企業価値の最大化を図っていただく。そして、一定の期間後に会社がこれを買戻し、その時点であらためてご子息に経営を譲り渡すと言ったケースも選択肢となるでしょう。これがいわゆるMBOといわれるスキームです。
あるいは、一定期間経過後に、やはりご子息が会社を継ぐ意思がないと判断されれば、会社規模や成長戦略によっては株式の上場を目指すこともできます。株式上場の場合、一族が一定の株式を引続き保有することもでき、資本と経営が完全に分離され、一族は株主として会社に関与し続けることもできるのです。
また、上場のタイミングで保有している株式を改めて売却すれば、一定の財をご子息のために残すこともできるのです。 以上、様々なケースを想定しながら、詳しくご提案させていただきますので、是非ご相談いただければ幸いです。